築古アパートを外国人専用物件に

「定期借家」「外国人専用物件」!?と聞き慣れない言葉(こちらはのちほどご説明します)が出てきたり、かなり思い切りのいる解決策のように思う方もいらっしゃると思いますが、あくまでひとつの事例としてお考え下さい。吉祥寺で築35年の木造アパートを経営するオーナーさんのお話です。各部屋1DKの比較的広めの部屋が6部屋の物件で、最寄りの駅からの距離は徒歩10分ほどと悪くはありません。

しかし、老朽化により入居者が次々に退去し3部屋の空室になってしまいました。そこで、敷金・礼金ゼロ(俗にいうゼロゼロ物件)にして、なかつ、賃料も下げるなどして様々な対策を行いましたが、一向に空室は埋まりませんでした。建物は35年が経過して老朽化が進み、間取りは和室という厳しい条件でした。正直なところ、かなり競争力は不足しているため、間取り変更も含めた大規模なリノベーションを視野に入れるべき状況でした。しかし、予算的にそれが難しかったので、予算をできる限りかけない方法が必要でした。

そこで、思い切って外国人専用物件にすることを提案しました。というのは、吉祥寺も昨今外国人観光客が増えており、深大寺や吉祥寺駅周辺に訪れることが多いようですが(サンロード商店街をスマートフォン片手にキャリーバッグを引いて歩く姿をよく見かけますね)、国際色豊かな大学が結構ありますね。ICUや東京外大、亜細亜大学など留学生が多いことでも知られています。

このように留学生が多いエリアである点と、和室というと最近の日本の若者には好まれない傾向が強いのですが、外国人からはむしろ好まれる傾向があるといった点。しかも、彼らは建物の古さは日本人のように気にしません。このような理由から外国人向けの(考え方の)リニューアルに至りました。

そこで、プランニングを実践するにあたり、①留学生をメインターゲットにする(絞る)、②短期間の定期借家契約にする(リスク軽減)、③部屋に必要最低限の家具と家電を設置する(バリューアップ)、という3つのポイントを提起しました。留学生をメインターゲットにする理由は先述したように、大学が多くあるといった理由のほか、学生という身分があり、場合によっては学校側が保証人になってくれるケースもあるためリスクが低いと考えたからです。そして、定期借家契約にすれば、仮に入居者に問題があった場合には再契約をしないことも可能なので、よりリスクを減らすことができます。なお、定期借家契約とは、賃貸借契約書で定めた賃貸期間が終了すれば借主は明渡さなければならない契約です。

これに対し、普通借家契約の場合には、更新拒絶をするには「正当事由(どうしても明渡してもらわなければならない理由)」がないとできません。また、定期借家契約では契約期間は自由に設定できます(1年未満でも可能)。普通借家契約では(一般的には2年間)1年以上となります。留学生のように短期間から中期間で日本に滞在する外国人にとっては、家具や家電を購入するのは大きな負担になります。そのため、部屋に必要最低限の家具と家電を設置すれば、大きなアピールポイントになります。実際の修繕は、壁紙の交換や畳の入れ替えなど最小限にとどめて、安価な家具や家電を設置するだけなのでコストもそれほどかかりませんでした。

当初はオーナー様も外国人の受け入れには不安を感じていましたが、このプランを聞いてすぐに実践してくれました。その結果、目論見通り外国人留学生の入居が次々決まり、募集開始後わずか数カ月の間で満室を実現しました。その後は、問題のある入居者もいましたが、退去後はすぐに新しい入居者が決まるなどのよいサイクルになり、現在も安定経営を続けています。

ここから学ぶ教訓として、①満室は続くとは限らない、②経営が厳しい時は発想の転換も必要、③リスクヘッジは様々な工夫で行う、でしょうか。今回はややレアなケースのお話でしたが、是非、参考にしてください。